【毎年違う味になる理由】その年の素材と向き合うシュトーレン作り
1年かけた四万十の旬でつくるシュトーレンを仕込む季節になると、思うことがあります。
「今年はどんな味になるだろう」

同じように作っているようで、去年と今年では、香りも、甘みも、酸味も、少しずつ違ってきます。
「シュトーレンの違いって何だろう」
「シュトレンは毎年味が変わるものなのかな」
そう感じてくださる方に、少しだけ、カゴノオトのシュトーレン作りの裏側をお伝えできたらと思います。
シュトーレンの味が毎年違う理由
カゴノオトのシュトーレンが毎年違う味になる理由は、大きく分けて2つあります。
ひとつめは、素材の量が毎年同じではないこと。
ふたつめは、その素材のおいしさをできるだけ活かせるように、作り方を少しずつ変えていることです。
1|農作物は自然の中で育つもの
カゴノオトが買わせてもらっているいちごや、ブルーベリー、柚子や栗などは、工業製品ではなく農作物。
雨が多い年もあれば、雨が少ない年もあり、暑さが厳しく、作物が思うように育たない年もある。
鳥や小動物による被害、虫の被害、台風の影響など畑では、本当にいろいろなことが起こっています。

「今年は少ししか採れなかった」
「今年は実が小さめだった」
「今年は香りがとてもいいよ」

など、作物の様子や畑の事を聞きながら、その年の素材を買わせてもらっています。
毎年同じ量を買わせてもらえるものもあれば、少しだけの年もある。
同じ名前のシュトーレンでも、そこに入っている素材は、その年だけの、その年の1年が重なった味になります。
2|少しずつ変わる仕込み方
もうひとつの理由は、作り方を少しずつ改善していることです。
買わせてもらった素材のおいしさをできる限り残せるよう、ただ混ぜ込むのではなく、どうすれば香りが残るか。
どうすれば果実の旨味が活きるのか。
そんなことを、毎年考えながら仕込んでいます。
印象に残っているのが、2022年の文旦です。
冷害の影響で不作だった年で、いつものようにたくさん使えるわけではなく、限られた量の文旦と向き合うことになりました。
「この文旦をできるだけ余すことなく使いたい」

それ以来、文旦は皮も実も果汁も使えるように、仕込みの方法を変えました。
限られた素材だったからこそ、今まで見落としていたおいしさに気づけたのかもしれません。
いちごは、収穫してすぐにセミドライへ
いちごの仕込みも、少しずつ変わってきました。

収穫してすぐのいちごは、みずみずしくて、香りも鮮やかです。
そのおいしさをどう残すかを考えた結果、今は収穫後すぐにセミドライにする仕込みをしています。

水分を少し抜くことで、いちごの旨味がぎゅっと凝縮されます。
甘みだけでなく、酸味や香りも残るように、状態を見ながら加工していきます。
乾かしすぎると、硬くなってしまう。
水分が多すぎると、シュトーレンの生地が重くなってしまう。
同じいちごでも、その年によって水分量や香りが違うので、素材に合わせて少しずつ加工法を変えています。
毎年違うからこそ、その年の味になる
雨の多かった年の生姜。
暑さの中で育ったブルーベリー。
少ししか採れなかった文旦。
収穫してすぐに仕込んだいちご。
ひとつひとつの果物が重なって、その年だけのシュトーレンの味になります。
今年の味は、今年だけのものです。
去年と少し違うところも、今年らしさとして味わっていただけたら、嬉しいです。

この記事を書いた人
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前成照
東京のホテルでコックとして働く中、食材の生産者を知りたくて休日は農家さんを訪ねていました。東日本大震災をきっかけに夫婦で高知県四万十町へ移住。農業の現場に触れる中で、生産者の努力が十分に評価されていない現実を知りました。そこで、人や素材の魅力を伝えるお菓子づくりを志し、四万十の旬の恵みを一年かけて集めたシュトーレンづくりを開始。食べる人がほっとできる時間を届けたいという想いで、一つひとつ丁寧に焼き上げています。
2026年6月23日







