クリスマスのドイツ菓子Lebkuchen(レープクーヘン)
こんにちは。カゴノオトスタッフのあきです。
8月ももうすぐ終わりを迎えます。夜には虫の鳴き声も聞こえ始め、稲刈りをしている田んぼも見かけるようになりました。少しずつ涼しくなっていく秋、カゴノオトではシュトーレンの製造に向けて本格的に始動していく季節です。
Lebkuchen
Gerhard G.によるPixabayからの画像
今月号の旅日記では、Lebkuchen(レープクーヘン)という焼き菓子について調べてみました。6月のSpeklatius(スペクラティウス)に続いて、クリスマスマーケットでも定番の焼き菓子です。
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レープクーヘンは丸くて大きな形をしていて(直径11.5センチくらい)、蜂蜜、スパイス、ナッツやドライフルーツがたっぷり入り、チョコレートでコーティングされているものが一般的です。小麦粉や卵、油はほとんど使わずに作られています。https://en.wikipedia.org/wiki/Lebkuchen
蜂蜜とスパイスと宗教
13世紀にはすでにドイツで存在していて、現代のドイツに相当する地域だけでなく、中世のイタリア、フランス、オーストリアなど広範囲にわたって似たようなお菓子が食べられていたようです。香辛料を使用することで長期保存が可能となり、またスパイスによって身体を温めるお菓子が根付いた背景には、その時代の宗教も密接に関係していました。
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中世において、キリスト教会がロウソクを大量に必要としたことから、蜜ロウを採取するための養蜂が盛んに行われました。その副産物である蜂蜜を、ロウソク製造業者が菓子に加工したものがレープクーヘンです。(当時、砂糖は輸入することでしか手に入らず、とても貴重で高価なものでした。)
レープクーヘンの香辛料は、バニラとシナモンを基本として、アニス、コリアンダー、クローブ、ジンジャー、カルダモン、白コショウなど、どの香辛料をどのくらい使うか、また他に入れるアーモンドやヘーゼルナッツ、クルミなどのナッツ、オレンジピールやレモンピールなどのドライフルーツをどのように配合するかは、作り手や地域によって違っています。(『ドイツ菓子大全』技術監修 安藤明 柴田書店 2012 P.241)
レープクーヘンはまた、gingerbread、Pfefferkuchen(プフェッファークーヘン)とも呼ばれます。写真は、カゴノオトのシュトーレン作業で、ジンジャーを細かく刻んだもの。
ニュルンベルクのElisenlebkuchen
ドイツの南部に位置するニュルンベルクでは、レープクーヘンが有名です。ニュルンベルク風レープクーヘンの高級品はElisenlebkuchen(エリーゼンレープクーヘン)と呼ばれ、ナッツを25%以上含み、粉類は10%未満であることが定義づけられています。ニュルンベルクで作られたレープクーヘンは、EUのPGI(PGI :Protected Geographical Indication:地理的表示保護)に登録されたNurnberger Lebkuchenの名前をつけることができるそうです。
(『ドイツ菓子図鑑 お菓子の由来と作り方』森本智子 誠文堂親光社 2018.7 p .93)
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これらのレープクーヘン、商品として売られているものは、円柱の缶や角柱の紙のパッケージに、皇帝や城、クリスマス風の飾りが描かれていてとっても素敵です。子ども向けのものには、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家(このお菓子の家も、実はレープクーヘンでできているとか)の形をしたパッケージなどもあって、パッケージを見るだけでもワクワクしてきます。
https://tokuhain.arukikata.co.jp/steinbach/2016/12/nurnberg.html
レープクーヘン、日本ではきっとあまり流通していないお菓子だと思いますが(私も食べたことがありません!)、蜂蜜とドライフルーツの甘さとナッツの歯応え、大きさからも、紅茶によく合いそうな、栄養価の高い食べ応えのあるお菓子だろうな。地域や作り手によってバリエーションが違うのもおもしろいですね。クリスマスマーケットやkonditorei(ドイツ語でお菓子屋さん)をまわって、食べ比べてみたいです。
2021年8月28日