1年かけて作る、手作りシュトーレンの物語
季節と作る365日の手しごと
カゴノオトの工房では、「1年かけてシュトーレンを作っています」と、よくお伝えしています。
「え?焼き菓子なのに1年もかかるの?」と驚かれることも多く、今回は、“1年かけて作るシュトーレン"の舞台裏を、季節とともにご紹介します。
始まりの冬
── すだち・栗・柚子、年を越えた下ごしらえ
素材の仕込みは早いものでは前年の冬からすでに始まっています。
すだちは何度も茹でこぼして苦味を抜き、柚子は粗糖に漬け、皮の中までじっくりと甘味を浸透させていきます。
ネットで簡単にいろんなものが手に入る時代に、生産者さんから直接素材を仕入れるのは効率はよくないかもしれません。
けれど、生産者さんと同じ場所に暮らし背景を知り、丁寧に仕込んでいくことで、味わいに深みが生まれていくと信じています。
彩りを詰める春
── いちご・文旦・小夏の旬をとじこめて
春は、シュトーレンに欠かせない柑橘やいちごの旬。
文旦や小夏は、皮と果肉を別々に仕込んでから合わせ、いちごはオーブンでセミドライにした後、粗糖でじっくり煮詰めます。
果物の仕入れは、1年に1度なので100キロ以上の果物を仕込むこともあります。
工房がいちごの赤で染まり、甘い香りに包まれる春は「あぁ、今年も春が来たなぁ」と感じる瞬間です。
保存と工夫の夏
── ブルーベリー・ぶどう・梅の手しごと
梅は一度冷凍して繊維を柔らかくし、粗糖でじっくり煮詰めます。
ブルーベリーはセミドライにした後、加熱して甘味と保存性のバランスを調整します。
素材は自分たちで直接買いに行くこともあれば、顔なじみの農家さんが届けてくれることもあります。
今年の天候の話や作物の話を聞かせてもらうのも貴重な時間で、1年として同じ年は無いので生産者さんの「今年こそは」という意気込みを聞かせてもらう事で自分たちも力をもらっています。
カゴノオトのシュトーレンは保存料や着色料などの食品添加物を使わずに作っているので、その年ごとの素材に合わせた加工が欠かせません。
乾燥・ラム酒漬け・粗糖漬け──シンプルに加工し素材の味を楽しんでもらえるよう工夫しています。
集大成の秋
── 熟成させて深まる、季節仕込みの味わい
秋は1年の集大成。
四季をめぐって仕込んできた果実たちを生地に混ぜ込み、ひとつひとつ丁寧に焼き上げていきます。
焼きあがったシュトーレンは、すぐには出荷しません。
ゆっくりと時間をかけて「熟成」させることで、果実の風味がなじみ、しっとりと奥行きある味わいへと変化していきます。
そして発送作業へ。
シュトーレンをひとつひとつラッピングし、箱に詰め、お客さまのもとへ旅立っていくその瞬間は、 やっぱり一番うれしい瞬間です。
「1年後の自分へのギフト」「1年お世話になった方への贈り物」と1年前からご予約して下さるお客さまも多く、お届けする方の1年に少しでも華を添えられたらという気持ちでお送りしています。
そしてその頃には、もう次の1年が静かに始まっています。
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「1年かけてシュトーレンを作る」というのは、めぐる季節の中で素材と向き合い、生産者さんと共に1年を歩み続けるということでもあります。
自然に耳を澄ませ、素材の力を活かし、人から人への想いをつないぎ、今年も1年かけたシュトーレン大事にお届けしていきます。
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2025年8月1日