未来を手繰り寄せる音

先日、2日間にわたるワークショップが無事終了しました。
今回のワークショップの大きなポイントは、「仮の場」ではなく、実際の菓子工房で製造し、リアルな販売スペースでお客様に商品を届けるという“本物の体験”に挑戦したことでした。

形だけの体験で終わらせず、子どもたち自身が最後まで責任を持って取り組めるよう、「菓子製造の許可」「設備」「販売場所」といった環境面を、自分たちカゴノオトと高知 蔦屋書店さんが整えました。

そして“面白い教育を届けたい”という思いを持つ元教員であり、主催者でもあるみよしたかやさんが、子どもたち一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、言葉を紡ぎ出すワークを重ね、内に眠る力を引き出していきました。

ワークショップの醍醐味のひとつに、「景色が裏返る瞬間」があります。

僕自身、初めて地元のスーパーで商品を販売させていただいたときのことを思い出しました。
販売者として売場に立った瞬間、それまで何気なく見ていた商品一つひとつに、「ここに並ぶまでの努力と工程」が存在することを実感したのです。

商品はただ生まれるわけではなく、アイデアを出し、原価を計算し、試作を重ね、商品として磨き上げ、取引先を開拓し、契約し、納品し、ようやく棚に並びます。
しかも、その後も「売れ続ける」ことが求められる、シビアな世界。

これまで何気なく買っていた商品たちが、誰かの苦労や熱意によって生まれたものだと知り、「よくここまで!」と心から感じました。

「ものづくり」は楽しく、心理的なハードルも比較的低いです。
けれど、それを「届ける」「販売する」となった途端、一気に難易度が上がります。

まるで、徒競走と借り物競走ほど違います。

「つくる」は徒競走。納得いくまで何度もやり直せますし、自分の中で完結することもできます。
一方、「販売」は借り物競走。自分一人では完結せず
・派手なカツラをかぶる
・英語が得意な人を探して一緒に走る
・名前に“さ”の付く人と縄跳びをしながらゴールを目指す
といったように、自分の殻を破り、他者と関わり、時に難題にぶつかりながらゴールを目指さなければなりません。

「作るのは職人の仕事、売るのは商人の仕事」と役割を分ければ楽ですが、カゴノオトのような小さなお店では、その両方を担う必要があります。

クラフトマンシップとエンタメ要素。
このどちらが欠けても、事業は前に進んでいきません。

今回のワークショップで、子どもたちは文化祭のような「仮の場」ではなく、リアルな菓子工房、リアルな販売スペースという舞台に立ちました。
これこそが、この取り組みの最大の醍醐味でした。

消費者としてではなく、「売り手」として売り場に立った瞬間、世界の見え方は大きく変わってきます。

そんな“景色が裏返る”体験こそ、子どもたちにとって何よりの収穫だったと思います。

お膳立てされたステージではない、真剣勝負の場で、子どもたちが未来を手繰り寄せていく音。
その音を、私たち大人も聞かせてもらい、その真摯な姿勢に、大人たちも自然と感化され、自分たちもまたワークショップに参加しているかのような時間でした。

この素晴らしい機会をくださった、みよしたかやさんに心より感謝して、今回のご報告を終わります。

なお、当日の様子は、こちらのリンクよりご覧いただけます。
高知放送さんがニュース番組としてご紹介下さいました。ぜひご覧ください!

【四万十町の菓子店「カゴノオト」でワークショップ 子どもたちがクッキーづくりから販売まで体験】

今日も1日しっかりやっていきます!

カゴノオトの前でした。

2025年6月9日

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